医学部出身という異色の経験を持ち、劇場公開もされた「自由を手にするその日まで」などインディーズ映画を手がけてきた天野友二朗の商業映画デビュー作。
抑圧された社会生活の中での人間の孤独、闇、愛、狂気を一貫してテーマにしてきた天野監督が、人間の二面性にフォーカスし、初の商業作品としてスケールアップした心理サスペンスを見せてくれます。
幸福な囚人の作品情報
監督 | 天野友二朗 |
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脚本 | 天野友二朗 |
出演者 | 山中アラタ 児玉拓郎 小原徳子 百合沙 |
音楽 | 天野友二朗 演奏: 新日本BGMフィルハーモニー管弦楽団 |
公開日 | 2019年12月6日 |
上映時間 | 108分 |
幸福な囚人の主演キャスト
山中アラタ
児玉拓郎
小原徳子
百合沙
幸福な囚人の見どころや予告動画
幸福な囚人のネタバレやあらすじ
無口で不器用な会社員の澤田には不妊症をきっかけにうつ病になった妻の存在があった。澤田はそんな妻を献身的に支えていたが、彼自身も次第に精神を病んでいく。そんな中、澤田の同僚として岸本という男が海外企業から転職してくる。澤田とは対照的に自信に満ち溢れた性格の岸本と親しくなるが、岸本の暴力性や猟奇的な一面を目の当たりにしてしまう。そんな岸本に恐怖感を覚える一方で、危険な魅力を放つ岸本のカリスマ性に徐々に魅せられていく。そして岸本から「もっと本能に忠実になれ」と吹き込まれ、心が揺れ動いていく澤田は、女性社員の美奈子と不倫の関係になってしまうが……。
無口な凡人会社員の男。そんな男の妻は女性の幸せとされる子供を産むことができない不妊症と知ってから完全に塞ぎ込んでしまっています。
そんな中でも、陰口や悪口が日々飛び交う社会に耐え忍び、妻の事を支えています。
男も自分自身の心の中に秘めた気持ちと葛藤し、精神的にきつくなり徐々に病んでいきます。
そんな時、海外先の会社から1人の男性が同期として転勤してきます。彼により男の人生は大きく変わります。
自分自身とは対照であり、積極的な彼の姿に好感を覚え、親しくなり始めます。
しかし、多くの時間を共にするようになると徐々に彼の暴力性や猟奇的な一面が見えはじめ、恐怖を抱くようになります。
その反面で、猟奇的で危険ながらも彼のカリスマ性に魅了され心が揺れていきます。
彼は自分の猟奇的部分に誇りをもっており、男の裏に隠し持つ気持ちを分かっているかのように徐々に誘い出します。
そして男は同じように家庭に悩みをもつ女性と不倫関係になるが、
社内での立場のために男から迫ってきた嘘の情報を彼女に広められ裏切られてしまいます。
彼女の裏切りに言葉を無くし、男は自身の中の狂気的部分を解放するようになります。
彼の姿を見る旅に岸本のような猟奇部分に洗脳されていき、自身の脳内の中にまで焼き付けられていきます。
さらに彼は人を殺し、その遺体まで切り刻む程の猟奇さを持っています。
それでも男は彼から目が話せず夢中になっていきます。
そして、徐々に会社内の周りの人にも復讐心を持つようになり幻聴や幻覚、現実が分からなくなってしまい、まさに狂い続けていきながらも脳内では本当の自分として存在していたのです。
裏切りと復讐心が自身の中に秘めていた猟奇的な部分が溢れ出たことにより、澤田は完全に別の人格として存在したのです。。
その後、彼からはもっと自身の気持ちに忠実になれといった言葉をかけられさらに彼の方に揺れていってしまいます。
もっと自身を解放しようと必死にもがきながらも狂気的部分も男の中から解放されていきます。
一方で、うつ病である妻も自分が分からなくなり、暴走を始めてしまいます。
訪れたお店の中で手首を切り自殺をしようとします。
妻の周りには血が広がっていました。
すぐに妻の元に男はかけより、妻は下を見つめたままの状態で自身の感情すらもわからない状態でした。
そこに共にしていた彼女は男のそんな姿を見て不気味に笑います。
家に戻ると妻はさらに暴れだし、妻は他の男性と関係を持ち全て男が悪いと言うのです。
妻はその後も他の男性と関係を持ち続け自分を壊していってしまいます。
しかし男は妻をなだめ続けていました。
会社内では彼女との噂がたちさらに男が1番嫌いとする陰口が社内を回り続け、男には冷感した目が向けられていました。
そんな中でも彼女は男に微笑んでいました。
しかし、これも男の本能がもたらした部分でもあり、男は自身が狂気化、自らが作ってしまっている環境に気づいていません。
その結果、男は別の工場で働くことになります。
後日、男が働いていた会社内に人の肉のようなものが送られてくるのです。
そこで社員たちが驚いていると男が姿を表します。
いきなり、社員たちを鈍器で殴りかかります。
完全に別の人間となった男は止まることはなく襲っていきます。
警察に止められ無理やり連れていかれてしまったまま、収容されてしまいます。
しかし男は全てが終わったような安堵した表情をします。
映画最後には妻と再会するとお互いに抱きしめ合うのです。
幸福な囚人の口コミやレビュー
天野友二朗監督の商業映画デビュー作「幸福な囚人」観ました。カナザワ映画祭で「自由を手にするその日まで」と「脂肪の塊」も観ているけど、一作目で度肝を抜かれたやけにリアルな陰湿な職場イジメ描写がさらに生々しく陰湿さを増していて殺意が芽生えましたよ。
— THE NZRK (@nzrknzrk) December 16, 2019
#幸福な囚人
昨日見て、ぼんやり反芻しながらやっと思い至った。登場人物はみんな壊れているけど、みんな壊れ方が違うんだ。
内に壊れていたり、外に壊れていたり、捻曲がって壊れていたり。
映画の人物ほど極端じゃなくても、自分や周りの人がそういう状態になる可能性があるのが怖い。— 海辺ゆく (@umibeyuku) December 15, 2019
シネマート新宿
シネマート心斎橋
ともに明日19日がラスト内臓まで響くような重厚な音
役者さんたちの圧倒的演技
観客をギリギリまで追い詰めて
最後に見せてくれるもの世の中にちょっとした違和感を感じたことがあるなら
自分というものがわからなくなったことがあるなら— しんちゃん (@exrdjaxx) December 18, 2019
幸福な囚人のまとめ
とにかく作り手の熱量をものすごく感じられます。こういう作品はきちんと評価してレイトショー・単館上映だけでなく上映環境を整えてあげてほしい。
暴力的で猟奇的で狂気的であまり万人には薦められませんが、非常に味のある作品です。